企業が単に社会に対して良いことをするだけではなく、その活動を通じて企業価値を高め、経済的価値と社会的価値の両方を創出する必要があるという認識の変化がある中で、CSR(企業の社会的責任、corporate social responsibility)が注目されています。
このような変化は、企業が社会の持続可能性に貢献すると同時に、新たなビジネスチャンスを見出し、自社の競争力を強化することにつながるとされています。
この記事では、「CSRとは」について解説し、CSR活動のメリットと企業が効果的にCSR戦略を推進するための方法を紹介します。特に、キリンホールディングスの成功事例を交えながら、CSRが企業にとってなぜ重要なのか、どのように実施するのかについて詳しく説明します。
CSRとは具体的に何を指すのか?学術的な定義とその変遷とは
CSRの意味とは、企業がその事業活動を通じて社会の持続可能性に貢献することを意味します。
Porter & Kramerの2006年の研究では、従来のフィランソロピー的なCSRではなく、自社の競争優位性に結びつく戦略性の高いCSR、すなわち戦略的CSRの重要性を主張しました。
また、経済産業省(2014)によれば、CSRは「ビジネスチャンスであり当該企業にメリットをもたらす存在である」と定義されており、従来の定義「CSRは企業が社会の健全な発展に寄与すること」から、戦略的CSRやCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)へと進化しています(倉持, 2020)。
CSR活動を行うメリットは何か?具体的に企業価値向上のメリットは?
CSR活動のメリットには、ブランド価値の向上、顧客ロイヤルティの強化、投資家からの信頼獲得などがあります。倉持(2020)の研究では、戦略性の高いCSR活動が企業の売上高と経常利益に有意なプラスの影響を及ぼすことが示されています。これは、CSR活動が企業価値を直接的に高めると同時に、サステナブルなビジネスモデルへの移行を促進し、長期的な競争力を強化することを意味します。
企業がCSRを推進する方法は?具体的なステップとは?
CSRを推進する方法としては、まず社会的課題と自社の事業との関連性を特定し、その解決に貢献するCSR活動を計画することが重要です。
次に、ステークホルダーとの協働を積極的に模索し、多様なパートナーと連携して社会貢献活動を展開します。具体的には、専門知識を持つ非営利組織との協働を積極的に模索し、社会的課題の解決に貢献する共有価値の創造を目指します。
さらに、CSR活動の進捗と成果を定期的に評価し、フィードバックを活用してCSR戦略の立案方法を継続的に改善していくことが求められます(倉持, 2020)。
CSR活動の成功例は?
キリンホールディングスは、CSVの考え方を経営に全面的に取り入れ、社長を委員長とするCSV委員会を設置しています。
これにより、グループ企業全体でCSRの戦略策定や実行状況の把握、事後評価を経営トップの関与のもとで強力に推進し、社会的インパクトを生み出しています(倉持, 2020)。
https://www.kirinholdings.com/jp/impact/
CSRは企業の業績にどのような影響を与えるか?
CSR活動は、企業の業績にプラスの影響を及ぼすことが多くの研究で示されています。倉持(2020)によると、戦略性の高いCSR活動が企業の売上高と経常利益に有意なプラスの影響を及ぼすことが示されています。この研究は、CSR活動が単に社会貢献にとどまらず、企業価値を高める戦略的な取り組みであることを裏付けています。
結びに
CSR(企業の社会的責任)は、企業が社会に良い影響を与えるだけでなく、その活動を通じて経済的価値と社会的価値の両方を創出し、企業価値を高める必要があるという認識のもと注目されています。
この記事では、CSRの学術的な定義とその進化、具体的な実施方法、およびCSR活動が企業にもたらすメリットについて詳しく説明し、キリンホールディングスの成功事例を挙げています。CSRは、社会の持続可能性への貢献と新たなビジネスチャンスの発見、競争力の強化につながるとされ、戦略的な取り組みが企業業績に有意なプラスの影響を与えることが示されています。また、CSR活動を効果的に推進するためには、社会的課題との関連性の特定、ステークホルダーとの協働、活動の進捗と成果の定期的な評価が重要であると強調されています。
参照
本回答で引用した主な論文は、倉持(2020)の『CSRが当該日本企業の業績に及ぼす影響に関する実証研究』です。この研究は、CSR活動と企業業績との関係について、戦略的CSRやNGO・NPOとの協働の観点から日本企業を対象に分析を行い、CSRの経済的メリットに関する有益な洞察を提供しています。