GRIスタンダードとは何か、そしてなぜ今注目されているのか?
GRIスタンダードは、企業が環境、社会、ガバナンス(ESG)のパフォーマンスを報告するためのフレームワークを提供します。このスタンダードは、もともとCeres(環境に配慮した経済を目指す連合)が1997年に国連環境計画(UNEP)と連携して立ち上げたGRIプロジェクトから始まりました(井上, 2016)。
1997年、アメリカのボストンで発足したGRI(Global Reporting Initiative)は、非営利団体CERESとTelus Instituteがその前身です。設立に当たっては、国連環境計画(UNEP)も一役買っています。設立の初期目的は、企業が環境に対して責任を持った行動を取ることを保証する説明責任のフレームワークを構築することでした。しかしながら、時間が経つにつれて、その活動範囲は社会的、経済的、及びガバナンスの問題にも広がりました。
GRIスタンダードは、企業がその経済的、環境的、社会的な影響を透明に報告し、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を明示することを促します。現在、GRIスタンダードは国内外で広く準拠されており、サステナビリティ報告の国際的な基準として注目されています。
GRIスタンダードとは何か?
GRIスタンダードは、企業の持続可能性報告のための国際的なフレームワークです。これは、企業がその経済的、環境的、および社会的パフォーマンスに関する情報を公開し、ステークホルダーとの対話を促進することを目的としています。
2016年に、以前のGRIガイドラインを更新し、GRIスタンダードとして新たに公開しました。これは、報告する組織が経済的、環境的、社会的な影響(正の影響と負の影響、外部への影響と外部からの影響を含む)を報告し、持続可能な発展に寄与する方法を示すための枠組みです。
また、GRIは2021年10月5日に共通スタンダードの最新版を、そしてその日本語版を2022年10月に公開しました。石油・ガス業界向けのセクター別スタンダードの日本語版も発表されていますが、その他のセクター別スタンダードは現在英語でのみ提供されています。
GRIスタンダードの策定には、企業、機関投資家、労働組合、民間団体、市民社会など多岐にわたるステークホルダーが参加しています。スタンダードは、必要に応じて定期的に更新されるようモジュール式で設計されています。
GRIスタンダードの発祥は?
GRIスタンダードの発祥の経緯は、企業の環境報告の内 容、信頼性、比較可能性を向上させるために、1997年にCeres(環境に配慮した経済を目指す連合)が国連環境計画(UNEP)と共同で立ち上げたGRIプロジェクトに遡ります。現在、GRIスタンダードは経済的、環境的、社会的な側面を統合する持続可能な戦略の策定に不可欠であり、国内外で高い準拠率を誇っています(井上定子, 2016)。
GRIスタンダードの主な内容と構成は?
GRIスタンダードは、組織の持続可能性影響、リスク、機会に関する透明かつ一貫した情報を提供するためのガイドラインを含みます。
日本語版はこちらからご覧いただけます:
https://www.globalreporting.org/how-to-use-the-gri-standards/gri-standards-japanese-translations/
これには、経済、環境、社会の各側面にわたる特定の指標が定義されており、企業がこれらの指標に基づいて報告することが奨励されています。
GRIスタンダードは、「共通スタンダード(1、2、3)」、「項目別スタンダード(200、300、400シリーズ)」、および「セクター別スタンダード(11~)」で構成されており、2021年10月以降順次公開されています。
JPX『ESG情報開示枠組みの紹介』より引用
3つの共通スタンダードは、すべての組織がサステナビリティ報告書を作成する際に適用されます。さらに、組織は自らにとって重要な項目(経済、環境、社会)について報告するために、項目別スタンダードおよびセクター別スタンダードから適切なものを選択します。
- 「GRI 1:基礎」 GRIスタンダードの使用ガイド
- 「GRI 2:一般開示」 報告組織に関する背景情報の開示ガイド
- 「GRI 3:マテリアリティ」 重要な項目の管理方法等の報告ガイド
- 「GRI 11~」セクター別スタンダード
- 「GRI 200、300、400シリーズ」 経済、環境、社会のインパクトに関する開示ガイド
GRIスタンダードを適用するメリットは?
GRIスタンダードを適用することで、企業は持続可能性に関する情報の透明性と信頼性を向上させることができます。これは、ステークホルダーとの信頼関係を強化し、企業の社会的責任(CSR)と環境、社会、ガバナンス(ESG)への取り組みを強化します。また、持続可能な開発目標(SDGs)との整合性を示すことにより、グローバルな課題への対応を促進することが可能です(若本亮佑ら, 2023)。
GRIスタンダードの最新バージョンは?
GRIスタンダードの最新バージョンは、G4として知られています。このバージョンは、持続可能性報告のためのガイドラインとして、GRIによって最後に更新されました。G4は、企業がその持続可能性と社会的影響をより正確に評価し、報告することを目的としています(井上, 2016)。また、GRIはIIRC(国際統合報告評議会)と協力し、サステナビリティ報告と財務報告を統合する取り組みを進めています。
GRIスタンダードとSDGsとの関係は?
GRIスタンダードは、持続可能な開発目標(SDGs)との関係性において重要な役割を果たします。GRIスタンダードを通じて、企業はSDGsへの貢献を具体的に報告できます。これにより、企業が取り組む社会的、環境的課題への影響を明確にし、グローバルな持続可能性への取り組みを促進することが可能になります(若本ら, 2023)。
GRIスタンダードの適用方法とメリット
GRIスタンダードの適用方法には、まず企業が関連する持続可能性の課題を特定し、GRIスタンダードに基づいてこれらの課題に対する自社のパフォーマンスを測定、報告するプロセスが含まれます。このプロセスを通じて、企業はその持続可能性の取り組みを透明にし、ステークホルダーとの信頼関係を構築できます。また、GRIスタンダードの適用は、企業が環境や社会に対する影響をより深く理解し、持続可能なビジネス戦略を策定する上でのメリットを提供します(若本ら, 2023)。
結びに
GRIスタンダードは、企業がその経済的、環境的、社会的パフォーマンスを報告するための国際的なフレームワークです。1997年にCeresと国連環境計画(UNEP)の協力で立ち上げられたこの制度は、企業が持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を透明に報告することを促します。
GRIスタンダードは、サステナビリティ報告の国際的な基準として広く認識されており、企業が社会的、環境的課題にどのように対応しているかを明示することで、ステークホルダーとの信頼関係を強化し、持続可能なビジネスモデルへの移行を支援します。
この認証プロセスには、経済、環境、社会の各側面に関する具体的な指標が含まれ、企業はこれらに基づいて報告することが奨励されています。GRIスタンダードの適用は、企業に透明性と信頼性を向上させるメリットを提供し、長期的な視点で見たときに企業のリスクを減らし、より安定した収益性を確保することにつながります。
参考文献
- 井上定子 (2016). “サステナビリティ報告のガイドラインについて ― GRIとIIRCを中心として.” 横浜経営研究 第37巻 第2号.
- 若本亮佑ら (2023). “BERTを用いたESG関連文章のGRIスタンダード分類.” 人工知能学会第二種研究会資料.